女性や子どもに多いも無呼吸症候群の原因を解説!肥満や扁桃腺の影響とは?

無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる、または浅くなる病気です。

その原因は肥満やストレス・いびきといった生活習慣だけではありません。実は、女性や子ども・高齢者・新生児など幅広い層にも影響を及ぼし、痩せている方にも発症するケースがあります。また、タバコや扁桃腺・鼻の構造など、個々の身体的要因も深く関係しています。

本記事では、無呼吸症候群の原因を幅広く解説し、原因に応じた治療法や改善策を詳しくご紹介します。まずは、無呼吸症候群の基本的な原因から見ていきましょう。

目次

無呼吸症候群(SAS)の原因と定義

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が停止する状態が繰り返される疾患です。具体的には、10秒以上の呼吸停止が1時間あたり5回以上または7時間の睡眠中に30回以上発生する場合に診断されます。

1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病・眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、すぐに治療が必要です。

出典:睡眠時無呼吸症候群(SAS)|e-ヘルスネット(厚生労働省)

厚生労働省も「死亡率が非常に高くなる」と評する症状です。

主に気道の閉塞や脳の呼吸調節機能の異常によって引き起こされます。その原因は大きく 閉塞性(OSA)中枢性(CSA) に分けられます。以下では、それぞれの詳細と関連する要因について説明します。

無呼吸症候群(SAS)の原因と種類

無呼吸症候群にはいくつかの種類があり、原因によって分類されています。これらを理解することで、自身の症状に合った適切な対処法が見つかる可能性があります。以下では、主な2つの種類について詳しく見ていきます。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)

それぞれの特徴や発生する仕組みを知ることで、治療の方向性を見極める手助けとなるでしょう。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、気道が物理的に狭くなることで発生します。主に身体的な特徴や生活習慣が原因です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、子どもや新生児にも見られることがあります。

以下にOSAの具体的な原因をまとめました。

肥満

首周りの脂肪が気道を圧迫し、空気の流れを妨げます。肥満指数(BMI)が高い人ほど、嗣明時無呼吸症候群のリスクが高まります。

顎や顔の構造

小顎症や下顎後退といった顔の骨格の特徴が気道を狭くします。また、アデノイドや扁桃腺の肥大も気道の閉塞につながる要因のひとつです。

筋肉の緩み

高齢化やアルコール摂取・睡眠薬の使用により、喉や気道周辺の筋肉が緩むと、気道が塞がれやすくなります。

喫煙

喫煙によって上気道に炎症が生じ、むくみや狭窄が進行します。

鼻づまり

アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲により、鼻呼吸が制限されることで気道閉塞のリスクが高まります。

このように閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の原因は、生活習慣の改善や原因となる病気の治療によって取り除ける場合が多い傾向にあります。子どもの場合は、早期に治療することで成長への影響を抑えることができるため、早い段階で医師と相談するようにしてください。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は、脳が呼吸を調節する信号を正常に送れなくなることで発生します。閉塞性の無呼吸と異なり、気道が閉塞していないにもかかわらず呼吸が停止する点が特徴です。閉塞性の無呼吸症状は肥満体型の場合に多く見られますが、中枢性睡眠時無呼吸症候群は痩せている方でも発症する可能性があります。

以下に、CSAの主な原因を挙げます。

脳幹の障害

脳梗塞や脳腫瘍などが、呼吸中枢を含む脳幹の機能を低下させます。

心不全

心臓が酸素を十分に全身に送れなくなることで、脳の呼吸調節機能が影響を受けます。

腎不全

体液バランスや代謝異常が中枢神経に悪影響を及ぼし、呼吸の調節が困難になることがあります。

薬剤の影響

鎮静剤やオピオイド系薬剤は呼吸中枢を抑制するため、CSAの発生リスクを高めます。

高度な高山病

高地での酸素濃度の低下が原因で、呼吸中枢が不安定になり、無呼吸が発生する場合があります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は、基礎疾患や薬剤が原因となることが多いため、原因を特定して適切に対処することが重要です。それぞれの原因を正確に理解し、適切な治療や生活習慣の見直しを行うことで、症状の改善が期待できるでしょう。

無呼吸症候群(SAS)の症状と問題

無呼吸症候群は、生活の質や健康にさまざまな影響を及ぼします。どのような症状が現れ、どのような問題を引き起こすのかを知ることは、早期発見と対策の第一歩です。以下に、無呼吸症候群の主な症状と引き起こされる問題を挙げます。

  • 無呼吸症候群の主な症状
  • 無呼吸症候群が引き起こす問題

これらを具体的に知ることで、自分や周囲の健康状態を見直すきっかけにしてみてください。

無呼吸症候群の主な症状

いびきの影響

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状は、睡眠中と日中でそれぞれ違った形で現れます

夜の間には、主に「呼吸がうまくいかなくなる」「目が覚める」といった問題が起こります。一方、日中には、そうした睡眠のトラブルが原因で集中力が落ちたり、気分が安定しなくなったりといった症状が特徴です。

睡眠中の症状日中の症状
いびき
大きないびきが特徴的。OSAで顕著に見られる。
過剰な眠気
夜間の睡眠不足により、日中に強い眠気を感じる。
呼吸停止
10秒以上の呼吸停止が繰り返される。家族が気づくことが多い。
集中力・記憶力の低下
質の低い睡眠が認知機能に影響を与える。
浅い眠り
呼吸停止に伴う酸素不足で目が覚め、眠りが浅くなる。
頭痛
特に起床時に感じる頭痛は、無呼吸症候群による酸素不足や血流問題が原因の可能性。
中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまうことがある。
気分が不安定になる
イライラや抑うつなど、情緒が不安定な状態になる。
頻尿
夜間に頻繁にトイレに起きる。
倦怠感
睡眠の質が低下することで、終日疲れを感じる。

このように睡眠中の症状は自分では気づきにくく、家族やパートナーが発見のきっかけになることが一般的です。一方で、日中の症状は仕事や日常生活の質を大きく下げてしまう原因になります。少しでも「おかしいな」と感じたら、早めに医師に相談するのようにしましょう。

無呼吸症候群が引き起こす問題

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病などのリスクを伴う疾患です。

無呼吸症候群が引き起こすこのような問題は、大きく「身体的な問題」「精神的な問題」「社会的な問題」の3つに分けられます。以下にそれぞれの問題に関する具体的な内容をまとめました。

身体的な問題精神的な問題社会的な問題
高血圧

心血管疾患

糖尿病の悪化

肥満の進行
うつ病

不安障害

ストレスの増加
仕事・学業への影響

交通事故のリスク

人間関係の悪化

まず、睡眠中に繰り返される酸素不足が原因で、高血圧や心血管疾患のリスクが高まることが問題です。放置すると生命を脅かす合併症につながる可能性があります。また、十分な睡眠を得られない状態が続くと、ホルモンバランスが乱れることも。その結果、食欲の増加や血糖値のコントロールが困難になり、肥満や糖尿病の悪化につながる恐れがあるのです。

また、睡眠不足は精神面にも大きな影響を与えます。うつ病・不安障害など、日常生活で意欲の低下や不安感に悩まされるケースが多くなることも問題のひとつです。さらに日中の眠気や集中力の低下によって、ストレスが増加することもあるでしょう。

集中力の低下や判断ミスは、仕事や学業の生産性を著しく低下させることもあります。運転中や危険な作業中に眠気に襲われ、事故を起こすリスクが高まることは重大な社会な問題です。また、いびきや夜間の覚醒は家族やパートナーにストレスを与えることも忘れてはいけません。

このように、無呼吸症候群は健康だけでなく、精神面や社会的な問題を引き起こすことがあります。症状に心当たりがあったり、家族やパートナーに指摘されたりしたときは、すぐに医師に相談して対策を講じましょう。

無呼吸症候群の原因と治療法

無呼吸症候群の原因を理解し、適切な治療法を選ぶことは、症状を改善するための重要なステップです。このセクションでは、原因の特定方法から治療法までを網羅的に解説します。以下の内容を参考に、自身の症状や状況に合わせた対処法を見つけてください。

  • 無呼吸症候群の原因を特定する
  • 医師の指導による治療
  • 自分でできる予防・改善方法の実践

これらを把握することで、無呼吸症候群の改善に向けた効果的なアプローチが見えてくるでしょう。

無呼吸症候群の原因を特定する

無呼吸症候群を正しく診断するためには、専門的な検査が不可欠です。原因を特定することで、最適な治療方法を選ぶことが可能になります。以下では、無呼吸症候群の原因を特定するための検査について、詳しく説明します。検査の内容は大きく分けて次の2つです。

  • 簡易検査
  • 本検査(PSG)

これらの検査を受けることで、症状の正確な診断と、適切な治療への第一歩を踏み出すことができます。

簡易検査

簡易検査は、自宅で実施可能な睡眠時無呼吸症候群(SAS)の初期検査です。主に外来診療で患者に機器を貸し出し、自宅で就寝中にデータを記録して診断の参考にします。

一般的な無呼吸症候群の簡易検査は、次のようなものです。

呼吸状態の測定

鼻または口からの呼吸気流をセンサーで感知し、呼吸が停止している時間や頻度を記録します。

酸素飽和度の測定

指先にパルスオキシメーターを装着し、血液中の酸素濃度(SpO2)をモニタリングします。無呼吸や低呼吸がある場合、酸素濃度が低下するパターンが見られます。

いびきの検出

マイクロホンや専用センサーでいびきの有無や強さを記録します。いびきは気道が狭くなっていることを示す重要な指標です。

胸部や腹部の動き

胸と腹にセンサーを装着し、呼吸に伴う動きを測定します。これにより、気道が物理的に閉塞しているか、または中枢性の問題かをある程度推測します。

簡易検査での結果をもとに、本検査の必要性を判断します。簡易検査は、自宅でポータブル機器を装着するだけ検査できるため、睡眠の質に影響を与えにくいことが特徴です。また、本検査に比べてコストが低く、患者の負担が少ないことも特徴といえます。

しかし、簡易検査では脳波や筋電図などの精密データは取得できません。正確な重症度の診断には不向きである点には注意が必要です。また、機器の操作ミスやセンサーのズレなどによって、正確なデータが取れないこともあります。

本検査(PSG)

睡眠時無呼吸症候群の本検査では、「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」が行われるのが一般的です。専門の睡眠検査施設や病院で一晩かけて行われ、精密で信頼性の高いデータを収集できます。

PSGは主に次のような指標を確認していきます。

  • 脳波(EEG)
    • 睡眠段階や深さを評価。
  • 眼球運動(EOG)
    • REM睡眠の検出に使用。
  • 筋電図(EMG)
    • 筋緊張や無呼吸時の筋活動を記録。
  • 心電図(ECG)
    • 心拍数やリズムの変化を監視。
  • 呼吸気流
    • 鼻・口からの呼吸の流れを測定。
  • 胸部・腹部の呼吸運動
    • 呼吸努力を評価。
  • 血中酸素飽和度(SpO₂)
    • 酸素レベルの低下を検出。
  • いびき音
    • いびきの有無や強度を記録。

このように簡易検査よりも多角的なデータ収集により、無呼吸の有無・タイプ(閉塞性・中枢性)・重症度を正確に評価できます。この検査で得られた情報をもとに、最適な治療法を選択できるのです。

ただし、専門施設での一泊検査のため、費用や時間的な負担が大きい傾向にあります。また、普段と異なる睡眠パターンになってしまう可能性がある点にも注意が必要です。

医師の指導による治療

無呼吸症候群の治療には、医師の指導のもとで行う専門的な治療法が重要です。それぞれの症状や原因に合わせた治療を受けることで、症状の改善が期待できます。以下では、医師による主な治療法を紹介します。

  • CPAP(シーパップ)
  • マウスピース(口腔内装置)
  • 手術

これらの治療法は、無呼吸症候群の原因や重症度に応じて選択されます。自分に最適な治療を受けるために、医師と十分に相談しましょう。

CPAP(シーパップ)

CPAPは持続的陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure)とも呼ばれ、無呼吸症候群の治療においては第一の選択肢に含まれるでしょう。主に中等度以上の閉塞性無呼吸症候群(OSA)の治療に使用されます。

CPAC療法では、鼻または鼻と口を覆うマスクを着用し、空気を送り込むことで気道の狭窄を防ぐことが特徴です。これにより、無呼吸や低呼吸にならず、酸素不足を解消することができます。

CPAP療法のメリット・デメリットは次のとおりです。

メリットデメリット
即効性があり、無呼吸の頻度を大幅に減少
重症例にも効果が高い
心血管疾患のリスクを低減

生活の質(QOL)の向上

手術不要で、安全性が高い
装着に慣れるまで不快感がある
毎晩使用する必要があり、継続性が求められる
乾燥や肌荒れのリスク
機器のコストとメンテナンス

旅行時の不便さ

副作用(空気嚥下)の可能性

また、一部の条件下ではCPAP療法が適応外になるケースがあります。CPAPが使用できない条件の例は以下のとおりです。

1. 解剖学的異常が原因の場合

気道の閉塞が明らかに解剖学的な異常(例:扁桃腺肥大や下顎後退など)による場合、CPAPでは十分な治療効果が得られないことがあります。この場合、マウスピースや手術療法が推奨されます。

2. 患者が装置を受け入れられない場合

心理的な抵抗感や装置の違和感に慣れず、CPAPが使用できない場合は、治療の継続が困難です。

3. 軽度の無呼吸症候群の場合

軽度の閉塞性無呼吸症候群(OSA)の場合、マウスピースや生活習慣の改善のみで十分な効果が得られることがあります。この場合、CPAPは不要と判断されることがあります。

4. 中枢性無呼吸症候群(CSA)の場合

中枢性無呼吸症候群(CSA)は、脳が呼吸を制御する信号を適切に送らないことが原因です。CPAPは、閉塞性無呼吸症候群(OSA)に対して効果を発揮しますが、CSAでは症状を悪化させる可能性があり、適応外とされます。この場合、ASV(適応型サーボ換気)など別の治療法が選択されます。

5. 上気道や肺に関連する疾患がある場合

重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気胸の既往がある場合、陽圧による呼吸困難や気胸の再発といったリスクがあります。

6. 未治療の鼻閉やアレルギー性鼻炎

鼻づまりや重度のアレルギー性鼻炎がある場合、CPAP装置から送られる空気が正常に気道に届かず、効果が限定的になります。この場合、鼻炎の治療や鼻中隔の矯正手術を行った後でCPAPを検討します。

7. 特定の副作用が強く出る場合

CPAPは比較的安全な治療法ですが、胃の膨満感(空気嚥下)や口・鼻の過剰な乾燥といった副作用のリスクがあります。これらの影響が強く出る場合には、CPAPでの治療継続は困難です。

8. 高齢者や重度の認知症患者

装置の使用方法や自分で管理することが難しい、高齢者・認知症患者では、別の治療法を検討する場合があります。

このようにCPAP療法が適応されない場合、マウスピースでの治療や手術が必要になることがあります。治療方針を決定する際には、医師との相談が欠かせません。

マウスピース(口腔内装置)

マウスピースなどの口腔内装置を取り付ける治療は、軽度から中等度の閉塞性無呼吸症候群の治療に有効です。CPAP療法を希望しない場合や適応外だった場合の代替手段として、広く利用されています。

マウスピースで下顎を前方に出す形に固定し、気道の閉塞を防ぐことが特徴です。いびきの原因になる気道の振動も抑えることができます。

マウスピースの作成には、基本的に歯科医師の診療が必要です。マウスピース治療は医療行為に該当するため、保険適応の場合は「歯科医療機関」での診察と処方が条件になります。無呼吸症候群の治療では、市販のいびき防止マウスピースなどとは異なり、患者ごとに適切な形状と機能を持った装置が必要です。

正確な歯型の採取やマウスピースの調整など、専門的な機器や技術が必要になるため、適切な効果を得るためには、歯科医師に相談することが最良の選択といえます。以下は、マウスピースによる治療のメリット・デメリットです。

メリットデメリット
軽度から中等度の無呼吸症候群に有効
保険適用の可能性
手術不要な非侵襲的な治療
メンテナンスが比較的簡単
CPAPほどの不快感はなく、慣れやすい

小型で持ち運びやすい
個別の作成が必要時間・費用がかかる
歯や顎に負担がかかる場合がある
効果が限定的
歯が少ない・入れ歯などの場合は適応外

初期段階では違和感がある

定期的なフォローアップが必要

手術

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の手術は、気道の狭窄や閉塞を根本的に改善することを目的とした治療法です。特に、扁桃腺肥大や鼻中隔湾曲などの身体的な異常が原因の場合、効果があります。

以下に、主な手術法とそれぞれの特徴をまとめます。

扁桃腺やアデノイドの摘出手術

扁桃腺やアデノイド(咽頭にあるリンパ組織)が肥大して気道を圧迫している場合に行われます。特に、子どもに多く適用される手術です。

鼻中隔矯正手術

鼻中隔(鼻腔を左右に分ける壁)が曲がっている「鼻中隔湾曲症」により、鼻呼吸が妨げられている場合の手術方法です。鼻中隔を整えることで、鼻腔の通気を改善し、気道の閉塞を軽減します。

上気道拡張手術(UPPP:口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)

軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)が長く、気道が狭くなっている場合の治療法です。軟口蓋の一部や口蓋垂、咽頭周辺の余分な組織を切除して、気道を広げます。

舌根部減量術

舌の一部を切除または縮小することで、気道を確保します。

顎骨前方移動術

下顎または上顎を前方に移動させる手術で、気道を広げます。

睡眠時無呼吸症候群の手術は、患者の状態や原因に応じて選択されます。手術は根本的な治療となる可能性がありますが、負担やリスクも伴うため、慎重な判断が必要です。

手術を検討する際は、医師と十分に相談し、他の治療法との比較を行ったうえで決めるようにしましょう。以下に無呼吸症候群の手術に関するメリット・デメリットをまとめました。

メリットデメリット
根本的な治療が可能
長期的な効果が得られる可能性がある

他の治療法で効果が得られない場合に有効
いびきや酸素飽和度の改善など、症状全般の軽減が期待できる

CPAPやマウスピースの使用が不要で、生活の質(QOL)が向上する
術後の痛みや腫れ・出血のリスクがある
効果には個人差がある

術後の回復に時間がかかる

年齢や体重増加などで、症状が再発する可能性

費用が高額で、保険適用でも負担が大きい

無呼吸症候群の手術は、根本的な治療として高い効果が期待される一方、身体的負担や術後のリスクを伴うため、慎重な検討が必要です。

自分でできる予防・改善方法の実践

無呼吸症候群を改善するためには、生活習慣の見直しが重要です。日常生活の中で取り入れられる簡単な対策が、症状の軽減に役立つ場合があります。以下の項目を参考に、予防や改善に向けた行動を始めてみてください。

  • 減量と体重管理
  • 飲酒などの習慣改善
  • 口呼吸の改善
  • 睡眠薬の服用を見直す
  • 睡眠時の姿勢を工夫する

これらの実践方法を取り入れることで、症状が和らぎ、睡眠の質を向上させることが期待できるでしょう。

減量と体重管理

睡眠時無呼吸症候群の対策として、減量・体重管理は大きな効果が期待できます。特に肥満が原因で気道を圧迫してしまうケースでは、症状の改善に期待できるでしょう。5~10%の体重減少でも効果が出ることがあります。

米国国立衛生研究所では、無呼吸症候群と体重の関係について、次のように発表しています。

4年間で体重が10%増加すると無呼吸低呼吸指数(AHI)が32%増加し、逆に体重が10%減少するとAHIが26%減少すると報告されています。

出典:Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep体AHEAD|NIH PubMed Centralより翻訳

体重管理の方法としては食事改善や運動習慣の導入がおすすめです。以下の要素を意識して、生活習慣の改善を図ってみましょう。

食事改善
  • 糖質や脂質を控え、野菜やタンパク質中心のバランスの取れた食事を心がける。
  • 夜遅い食事を避け、就寝3時間前には食べ終える
運動習慣の導入
  • 有酸素運動(ウォーキング・ジョギングなど)を1日30分以上、週3~5回行う。
  • 筋力トレーニングで基礎代謝を上げる
生活習慣の見直し

規則正しい生活リズムを作ることで、食事や運動の時間を一定に保つ。

一気に10%減少を目指すのではなく、まず5%の減量を目標にして、無理なく継続することが大切です。

飲酒などの習慣改善

アルコールや喫煙は気道を狭める原因となります。禁酒・禁煙などが無呼吸症候群の症状軽減につながるでしょう。

ただし、急な禁酒・禁煙は、かえってストレスの増加につながる可能性があります。まずは飲酒量・喫煙量のコントロールからはじめたり、禁煙外来を利用したりするのがおすすめです。

習慣改善の際には、以下のポイントを心掛けてください。

飲酒量のコントロール
  • 特に就寝前の4時間以内は飲酒を控える。
  • 飲む場合は適量(ビール1杯やワイン1杯程度)にとどめる。
禁煙の取り組み
  • 禁煙補助薬やニコチンパッチを活用して無理なく禁煙を目指す。
  • 禁煙外来を利用し、医師のサポートを受ける。

口呼吸の改善

口呼吸は無呼吸症候群を悪化させる習慣のひとつです。普段から鼻で呼吸することを意識して生活してみましょう。

また、アレルギーや鼻炎などの症状で鼻づまりがひどい場合、これらの治療が無呼吸症候群の症状改善につながるケースもあります。耳鼻科医に相談し、治療を受けることを検討してください。

口呼吸の改善方法として、次のような要素を意識してみましょう。

鼻づまりの治療
  • 鼻スプレーや蒸気吸入で鼻の通りを良くする
  • 鼻中隔湾曲症や慢性鼻炎がある場合は、耳鼻科で治療を受ける。
口閉じテープの使用
  • 就寝時に専用のテープを貼り、自然と鼻呼吸になる環境を作る。
鼻呼吸の練習
  • 日中、意識して鼻で呼吸するよう心がける。
  • 深呼吸を習慣化し、鼻呼吸の感覚を体に覚えさせる。

睡眠薬の服用を見直す

睡眠薬の一部は筋肉を弛緩させる作用を持つため、睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させる可能性があります。

睡眠薬を服用している場合は、医師や薬剤師と相談して無呼吸への影響を確認してください。必要に応じて服用量を減らしたり、服用時間をずらしたりなど、薬の影響を最小限に抑える方法を提案してくれる場合もあります。

ただし、自己判断で服用をやめたり、量を減らしたりすることは避けてください。睡眠の質が悪化し、睡眠不足・ストレスの増加などのリスクが伴います。さらに無呼吸症状が悪化するケースもあるため、必ず医師に相談してください。

また、睡眠薬の服用を見直す一環として、自然な睡眠習慣を作ることもポイントです。医師との連携を大切にしながら、次のような方法で睡眠習慣を改善してみましょう。

リラックスタイムを確保する
  • 軽いストレッチやヨガで体をほぐす。
  • 温かいお茶(カフェインレス)を飲む。
  • 深呼吸や瞑想を行い、副交感神経を活性化させる。
デジタルデトックス
  • 就寝の1時間前にはスマホやタブレットの使用を避ける
  • 明るい照明は避け、間接照明などを使用する。
快適な睡眠環境を整える
  • 室温は18~25℃程度を維持し、湿度は40~60%に整える。
  • 遮光カーテンを使用し、理想的な睡眠環境を作る。
日中の活動量を増やす
  • 日中に適度な活動を取り入れる。
  • 就寝前に激しい運動はしない

睡眠時の姿勢を工夫する

いびきの影響

仰向けで寝ると舌が気道を塞ぎやすくなるため、横向きで寝る姿勢を習慣化するようにしましょう。閉塞性の無呼吸症候群の場合、睡眠時の姿勢を変えるだけで症状が大きく軽減されることがあります。

横向きで寝る習慣をつけるためには、以下のような練習がおすすめです。

抱き枕の活用
  • 長さ1m以上の抱き枕を抱える。
  • 抱き枕のサポートで寝返りを減らし、安定した姿勢を保つ。
体位矯正用クッションの使用
  • 横向きで寝る姿勢をサポートする専用クッションを活用する。
  • 背中や腰のサポートが充実している製品を選ぶ。
枕の高さを調整
  • 首のカーブに合う高さに調整可能な枕を使用する。
  • 高反発素材体圧分散型の枕を選ぶ。
  • 傾斜がついている枕(ウェッジピロー)を使用する。

このように睡眠姿勢を維持するためには、枕やクッションを使用するのが効果的です。快適な睡眠姿勢を維持するには、布団やマットレスと体の隙間を埋めるように意識しましょう。横向き寝の場合は、首とマットレスの間に大きな隙間ができることがあります。布団やマットレスの硬さにあわせて、枕の高さや素材を選ぶのがおすすめです。

姿勢の工夫は、無呼吸症候群の一時的な緩和策として有効ですが、根本的な治療ではありません。医師の指導のもと、他の治療法や生活習慣の改善と組み合わせて、より包括的に取り組むことが重要です。

まとめ

無呼吸症候群の原因は、大きく閉塞性無呼吸症候群(OSA)中枢性無呼吸症候群(CSA)に分類されます。

閉塞性無呼吸症候群(OSA)は、主に気道の狭窄が原因です。肥満や扁桃腺の肥大・下顎後退などの身体的な要因・筋肉の弛緩による影響が原因につながります。一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は脳が正常な呼吸指令を送れないことが原因です。心不全や脳血管障害といった基礎疾患・特定の薬剤が要因となる場合があります。

これらの要因が単独または複合的に作用し、睡眠中の呼吸停止や低呼吸を引き起こす病気です。症状に応じてCPAP療法やマウスピースの使用・外科手術が行われます。医師との連携によって症状に合わせた適切な治療と、生活改善が重要です。

参考文献一覧

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