退職・休職をお考えの方へ「不眠症で診断書をもらう」ときの流れや注意点を紹介

不眠症 診断書

不眠症に悩んでいる方にとって、診断書の取得は非常に重要なステップです。

不眠症の診断書は、医師が症状や病状を確認し、適切な治療を行うために必要不可欠です。また、診断書があることで、職場や学校に対して不眠症の状態を説明し、必要なサポートを得ることができます。

不眠症が疑われる場合は、早めに受診し、診断書を取得することをおすすめします。この記事では、不眠症の診断書を取得する方法やその重要性について詳しく解説します。

目次

不眠症とは?

不眠症について理解することは、適切な対処を行うための第一歩です。ここでは、不眠症の定義や症状、影響について詳しく見ていきます。

  • 不眠症の定義
  • 不眠症の主な症状
  • 不眠症の影響

これらの項目を通じて、不眠症がどのように日常生活に影響を与えるかを理解しましょう。

不眠症の定義

不眠症とは睡眠時間を確保していても、十分な休息が得られず、日中の活動に支障をきたす状態のことです。厚生労働省の定義では、不眠症には主に4つのタイプがあります。

入眠障害

寝つきが悪く、眠りに入るまでに時間がかかる状態。

中途覚醒

眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める状態。

早朝覚醒

朝早く目が覚めてしまい、その後再び眠ることができない状態。

熟眠障害

一見十分な時間寝ているにもかかわらず、ぐっすり眠れた感じが得られない状態。

これらの症状が持続し、生活に影響を与える場合、不眠症と診断されることがあります。次の項目では主な具体的な症状について説明します。

出典:不眠症|e-ヘルスネット(厚生労働省)

不眠症の主な症状

不眠症の症状は個人によって異なりますが、一般的に以下のような症状が見られます。

  • 眠りにつくまでに時間がかかる(入眠困難)
  • 睡眠中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 朝早く目が覚めてしまい、その後眠れない(早朝覚醒)
  • 睡眠が浅く、熟睡感が得られない
  • 昼間に強い眠気や倦怠感を感じる
  • 集中力や記憶力が低下する
  • イライラしやすくなる
  • 気分が落ち込みやすくなる
  • 抑うつ症状が現れる
  • 身体的な疲労感が強い
  • 頭痛や消化器症状が見られる
  • 精神的に不安定になる

これらの症状が長期間にわたって症状が続く場合は、心身に大きな影響を及ぼし、仕事や学業・対人関係など、生活のさまざまな側面に悪影響を与えることがあります。

早期の診断と適切な治療が、症状の悪化を防ぎ、健康的な生活を取り戻すためには重要です。医師や専門家に相談することで、適切な対処法を見つけることができます。

不眠症の影響

不眠症は、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような影響が考えられます。

  • 仕事や学業の効率が低下する
  • 職場や学校でのミスや事故のリスクが増加する
  • 人間関係が悪化する
  • 精神的なストレスが増加する
  • 身体的な健康状態が悪化する
  • アルコールや薬物などの依存症リスクが高まる
  • 交通事故のリスクが増加する
  • 自殺リスクが増加する

不眠症は単なる睡眠不足にとどまらず、これらの深刻な問題を引き起こす可能性があるため、放置せずに適切な治療を受けることが重要です。早期に対策を講じることで、これらのリスクを軽減し、健康な生活を取り戻すことができます。

不眠症で診断書をもらうときの基準

不眠症の診断は、主に「国際睡眠障害分類第3版(ICSD-3)」とアメリカ精神医学会が作成したDSM-5」という2つの基準があります。ICSD-3は睡眠障害の観点からの基準、DSM-5は精神疾患の観点からの基準です。不眠症にはさまざまな要因があるため、このように複数の観点があります。

この2つに共通する基準は次のとおりです。

  1. 睡眠の開始、維持、または質に問題があり、その結果、日中の機能に悪影響を及ぼしている。
  2. 睡眠の障害が少なくとも1か月間継続している。
  3. 睡眠の障害が他の精神疾患や身体疾患によって十分に説明できない。
  4. 睡眠の障害が物質の使用や薬物の副作用によって十分に説明できない。

ICSD-3・DSM-5の各基準では、さらに複数の「サブタイプ」に分けられます。症状や原因に基づいてサブタイプを分けることで、患者一人ひとりの症状に応じた適切な対応が可能になるのです。

ここでは、ICSD-3やDSM-5などの主要な診断基準について詳しく解説します。

  • ICSD-3の基準
  • DSM-5の基準
  • その他の診断基準

これらの基準を理解することで、自分の状態がどのように評価されるかを知ることができます。

ICSD-3の基準

国際睡眠障害分類第3版(ICSD-3)では、不眠症は「不眠症障害」として以下の基準を満たす場合に診断されます。

ICSD-3では、不眠症障害はさらに以下のサブタイプに分類されます。

入眠困難型不眠症
  • 特徴: 寝つくのに時間がかかる(通常30分以上)。
  • 原因: ストレスや不安、生活習慣の乱れなどが影響することがあります。
中途覚醒型不眠症
  • 特徴: 夜中に何度も目が覚めてしまい、再び眠るのが難しい。
  • 原因: 睡眠の浅さや、睡眠中に不安や考え事が頭に浮かぶことが影響することがあります。
早朝覚醒型不眠症
  • 特徴: 朝早く目が覚めてしまい、その後眠れない。
  • 原因: 加齢やうつ病、過剰なストレスなどが関与することがあります。
混合型不眠症
  • 特徴: 上記の複数の症状が同時に現れる場合。
  • 原因: 原因が複雑で、複数の要因が絡んでいることが多いです。
その他の特定の型
  • 特徴: 上記のサブタイプに該当しないが、特定の特徴を持つ不眠症。
  • : 睡眠相後退症候群(夜型人間のように、寝る時間が大幅に遅れてしまう)など。
未特定の型
  • 特徴: 上記のどのサブタイプにも明確に分類できない不眠症。
  • 原因: 明確な原因やパターンが特定できない場合。

不眠症の診断には、医師が患者の睡眠に関する詳細な情報を聞き取り、必要に応じて睡眠検査などの追加検査を行います。これらの基準に基づいて診断が行われるため、適切な対応が重要です。

DSM-5の基準

DSM-5は、アメリカ精神医学会が作成した精神疾患全般の診断基準です。基本的な診断基準はICSD-3と同様ですが、DSM-5では以下のサブタイプに分類されます。

  • 入眠困難型不眠症
  • 中途覚醒型不眠症
  • 早朝覚醒型不眠症
  • 混合型不眠症

ICSD-3が睡眠障害全般を網羅しているのに対し、DSM-5は精神疾患に焦点を当てていることが大きな違いです。

DSM-5は精神疾患全般に対応する基準であり、不眠症はその一部として診断されます。このため、診断時には「他の精神疾患や物質使用障害が不眠症の原因ではないか」を慎重に見極めることが重要です。精神科医や心理学者が主に使用し、精神疾患全般の診断に適用されます。

その他の診断基準

ICSD-3やDSM-5以外にも、不眠症の診断基準として以下のものがあります。

日本睡眠学会の診断基準

日本国内で広く使用され、特に国内の医療機関や睡眠専門クリニックでの診断に用いられます。

アメリカ睡眠医学会の診断基準

アメリカ国内での睡眠障害の診断において一般的に使用される基準です。特に専門医による詳細な診断が必要なケースで活用されます。

ヨーロッパ睡眠研究会(ERS)の診断基準

ヨーロッパでの睡眠障害の診断に用いられ、地域によっては診断と治療の指針として重要な役割を果たします。

これらの基準は、それぞれ独自の定義や診断方法を持っていますが、共通して、睡眠の質や量に問題があり、それが日常生活に悪影響を及ぼしている状態を診断基準としています。

不眠書の診断書取得方法

不眠症の診断を受けた後、診断書を取得することが必要になる場合があります。ここでは、診断書の内容や取得方法について詳しく説明します。

  • 診断書の内容
  • 診断書を依頼する方法

診断書をスムーズに取得するために、これらの情報を確認しておきましょう。

診断書の内容

診断書とは、医師が患者に対して行った診断結果を公式に記録した文書です。保険請求や職場への提出、治療の継続などに必要になることがあります。

不眠症の診断書に記載されるのは、次のような内容です。

  • 連絡先(医療機関の電話番号や住所)
  • 患者の氏名・生年月日・住所
  • 診断名(例:不眠症障害)
  • 診断基準(使用された診断基準の種類)
  • 症状(具体的な不眠の症状)
  • 検査結果(実施された睡眠検査などの結果)
  • 治療内容(処方された薬や推奨された治療法)
  • 診断日
  • 医師の氏名・資格
  • 医療機関名

これらの情報が診断書に記載されることで、診断の正確性が保証され、患者が適切な治療を受けるための指針となります。また、保険請求や職場への提出など、診断書を使用する際の手続きが円滑に進められるようになる、重要な書類です。

診断書を依頼する方法

不眠症の診断書を発行してもらうには、まず医療機関を受診し、医師に診断を受ける必要があります。その後、医師に診断書の発行を依頼します。診断書を依頼する際には、以下の点に注意してください。

診断書が必要な理由を明確に伝える

診断書を必要とする目的(保険請求・職場への提出など)を医師にしっかり伝えることで、適切な内容の診断書を作成してもらえます。

診断書の内容について医師と相談する

診断書に記載してほしい項目や内容について、医師と相談しておきます。これにより、目的に合った診断書を作成してもらえます。

診断書の発行手数料について確認する

診断書の発行には手数料がかかる場合があります。事前に手数料を確認しておきましょう。

診断書の発行までに必要な時間を確認する

診断書の発行には時間がかかる場合があります。必要な提出期限に間に合うよう、発行までの時間を確認しておくことが重要です。

診断書の発行手数料や発行にかかる時間は、医療機関によって異なります。診断書発行の手数料は2,000円~5,000円ほどが一般的です。また、発行には数日~1週間程度かかる場合があります。

多くの検査が必要な場合や診断書の内容が複雑な場合は、発行までに時間を要するので注意してください。また、初診時に診断書の発行はできないクリニックなどもあるので、事前に確認しておきましょう。

診断書をもらう前に不眠症のセルフチェック

不眠症かどうかを自分でチェックする方法があります。ここでは、セルフチェックの手順や、どのような場合に専門医の診断が必要かについて説明します。

  • セルフチェックの方法
  • 専門医師の診断が必要な理由

セルフチェックで不安を感じた場合、適切な対応を取るための情報を提供します。

セルフチェックの方法

不眠症のセルフチェックは、専門医による診断ではありませんが、自分の睡眠状態を把握するための有用な方法です。以下の質問に答えて、自分の睡眠の状態を確認してみましょう。

  1. 眠りにつくまでに時間がかかるか?
  2. 睡眠中に何度も目が覚めるか?
  3. 朝早く目が覚めてしまい、その後眠れないか?
  4. 睡眠が浅く、熟睡できないか?
  5. 昼間に眠気や倦怠感を感じるか?
  6. 集中力や記憶力が低下しているか?
  7. イライラしやすくなっているか?
  8. 気分が落ち込みやすくなっているか?
  9. 身体的な疲労感を感じているか?
  10. 頭痛や消化器症状があるか?
  11. 精神的な不安定さを感じているか?

これらの質問に「はい」と答えた項目が多い場合、不眠症の可能性があるかもしれません。ただし、セルフチェックの結果はあくまでも参考に過ぎません

自己診断に頼るのではなく、気になる症状がある場合は、専門医に相談することを強くおすすめします。専門医による適切な診断と治療を受けることが、根本的な改善につながります

専門医師の診断が必要な理由

セルフチェックでは、不眠症の原因やその重症度を正確に判断することは難しいため、専門医の診断が重要です。

不眠症の原因は、ストレスや生活習慣・身体的な病気・精神的な健康問題など、さまざまな要因が絡み合っていることが多くあります。また、慢性的な不眠は、うつ病や不安障害・心血管疾患などの重大な健康問題と関連している場合があるため、医師による正確な診断が必要です。

医師は、次のようなステップで診断と治療を行います。

STEP
症状の詳細な聞き取り

患者の睡眠パターン・日中の生活状況・ストレスの要因・生活習慣(飲酒やカフェインの摂取・運動の有無など)について詳しく聞き取りを行います。これにより、不眠症の背景にある要因を特定します。

STEP
身体的および精神的健康状態の評価

身体的な疾患(睡眠時無呼吸症候群や甲状腺機能障害など)や、精神的な問題(うつ病や不安障害など)が不眠の原因となっていないかを評価します。これには、血液検査や心理テストなどが含まれることがあります。

STEP
睡眠検査の実施

必要に応じて、ポリソムノグラフィーなどの睡眠検査を行い、睡眠の質や呼吸状態を詳細に調べます。この検査は、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などの睡眠関連疾患を診断するために特に重要です。

STEP
治療計画の策定

診断結果に基づき、医師は最適な治療法を提案します。治療法には、認知行動療法(CBT-I)や薬物療法、生活習慣の改善指導が含まれる場合があります。治療は個々の患者さんの状態に合わせてカスタマイズされます。

STEP
経過観察と調整

治療を進める中で、患者の反応を観察し、必要に応じて治療計画を調整します。これにより、治療の効果を最大化し、長期的な改善を目指します。

医師による診断と治療プロセスにより、患者は根本的な原因に対処し、より効果的な治療を受けることができます。自己判断に頼るのではなく、早期に専門医に相談することが重要です。

不眠症の診断では検査入院が必要になることがあります。下記の記事では、不眠症で検査入院する場合の期間や費用・流れを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

不眠症の診断を受ける際の注意点

不眠症の診断を受ける際には、事前に知っておくべきことがいくつかあります。ここでは、診断の際に必要な情報や、病院の選び方について説明します。

  • 診断の際に必要な情報
  • 診断を受ける病院の選び方

これらのポイントを押さえて、適切な診断を受けましょう。

診断の際に必要な情報

不眠症の診断を受ける際には、以下の情報を医師に伝えることが重要です。

  • 睡眠に関する具体的な症状(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒など)
  • 睡眠時間や睡眠パターン
  • 睡眠の質(熟睡感・疲労感など)
  • 日中の眠気や倦怠感
  • 精神的な症状(不安・抑うつなど)
  • 身体的な症状(頭痛・消化器症状など)
  • 生活習慣(食事・運動・睡眠時間・カフェイン摂取量・アルコール摂取量など)
  • 服用している薬やサプリメント
  • 過去の病歴
  • 家族歴

これらの情報を正確に伝えることで、医師は不眠症の原因や重症度をより詳しく把握することができます。

具体的な症状や睡眠パターン・日中の症状などは、不眠症の種類や原因を特定するために不可欠です。また、精神的および身体的な症状・生活習慣の詳細は、診断の際に他の潜在的な原因を見極める助けとなります。

さらに、服用中の薬やサプリメント・過去の病歴や家族歴も、医師が総合的な視点から診断を下すために必要な情報です。これらの情報をもとに、医師は最適な治療法を提案し、症状の改善を図ることができます。

診断を受ける病院の選び方

不眠症の診断を受ける病院を選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮することが重要です。

まず、睡眠専門医がいる病院を選ぶことが大切です。睡眠専門医は、睡眠に関する豊富な知識と経験を持ち、不眠症の原因を的確に診断し、適切な治療を提案してくれます。

次に、睡眠検査が可能な病院も選択肢に入れましょう。睡眠検査では、睡眠中の脳波や呼吸・心拍数などを測定し、睡眠の質や問題を詳細に調べることができます。この検査により、睡眠時無呼吸症候群など、特定の睡眠障害が発見されることもあります。

また、患者の立場に立った丁寧な説明をしてくれる病院を選ぶことも重要です。診断や治療に関する情報をしっかりと理解できるよう、医師が親切に説明してくれる病院であることは、安心して治療を進めるために欠かせません。

最後に、通院しやすい場所にある病院を選ぶことも考慮しましょう。継続的な通院が必要になることが多いため、無理なく通える距離にある病院を選ぶことで、治療の負担を軽減できます。

これらの点を考慮して病院を選ぶことで、より良い診断と治療を受けることができるでしょう。

まとめ

不眠症に悩んでいる方にとって、診断書の取得は非常に重要です。不眠症の診断書を持つことで、医師から適切な治療法やアドバイスを受けることができ、日常生活の改善に役立ちます。また、診断書があれば、職場や学校に対して不眠症の状態を説明し、必要な配慮を求めることも可能です。

不眠症に対しては、一人で悩みを抱え込まずに、医師に相談することが何よりも大切です。医師は、患者の症状や生活習慣を詳しく聞き取り、その情報をもとに最適な治療法を提案します。これにより、不眠症の根本的な原因に対処し、生活の質を向上させることが期待できるでしょう。

また、医療機関と協力して診断を受けることで、正確な診断と適切な治療を受けることができます。さらに、医師から生活習慣の改善や精神的なサポートについてもアドバイスを受けることができ、不眠症の改善につながる可能性が高まります。

不眠症は、適切な治療とサポートを受けることで改善できる疾患です。積極的に医療機関と協力し、適切な診断と治療に取り組むことが、健康的な生活への第一歩となります。

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